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怖い話5

Category: 小ネタ  

夏が本格的になってきました。






 




続きの話。

俺は今病室でこの話を打っている。
実はあの山での一件は先週のことだ。

今日は7先輩が来てて、俺が入院した後のことを聞いた。
書いて大丈夫なのかと思う内容もあるけど、ここの掲示板と皆さんなら大丈夫そうなので書いてく。







俺が入院して数日後、7先輩が見舞いにやってきた。
無理矢理自主退院した人が何食わぬ顔で見舞いに来たので、看護師さんが「…え?」みたいな顔をしてた。

7先輩は重そうな荷物を脇に置き、お土産だと言ってどこかの温泉町の温泉饅頭を差し出してきた。
これ県外の温泉ですよね、とか大学の寮とか教官への届け出とか大丈夫なのかと聞くのも野暮なので、とりあえず体の調子を聞いておく。

「先輩、体大丈夫なんですか」
「病院を出た後はしばらく動けなかったけれど、あちらについてからはそれほど」
「あちら?」

7先輩は質問に答えず、先輩の脇、俺のベッドの足元にある紙袋に手を伸ばした。
ブランド名が書かれた紙袋は確か全国展開の靴屋のものだ。
おそらくブーツ用と思われる紙袋はかなりの高さと深さがある。

7先輩はそこに手を突っ込んで

「これの実家」

鷲掴んで引きずりだした灰色のものは、どう見てもあの広場にあった人形だった。
何をしてるんだこの人は。

ひゅぅと空気が変な音を立てて喉を通り過ぎていった。
俺はその人形からなるべく距離を取ろうとベッドの枕側で体を丸める。

「そこまで?」
くつくつと笑う。
「そりゃね!? なんつーもん持ってきてんスか!」

手のひらにジワリと嫌な汗が広がる。
そのぬめる物が自分の血のような錯覚も相まって、軽い吐き気までしてきた。

「なんだと思う?」
「は」
「だから、貴方はこれ、なんだと思っている?」
「そりゃ、人形、の、よう…な」
「ええ、人形だわ。何のための人形だと思う?」
「…え?」

7先輩は人形(?)を見つめながら、右手でぶらぶらと無造作に揺らす。
石製に見えたそれはそれは存外軽いらしい。

「これ、なんていう人形だと思う?」

歪に人間を象った人形。
くり抜かれた半月の目。



「埴輪…」



粘土を筒状に固めて、人に見えるように装飾を施して焼いた人形だ。
表情は掘りぬいて作られていたはず。
記憶の中の教科書に載っていた、その虚ろな目は7先輩が掴んでいる人形の半月の目口と重なる。
昔教科書で見た挿絵を記憶の隅から手繰り寄せる。

赤茶色の体色。
胴が長い、というより足がない。
手は以上に細く、指が表現されていることは無かったはず。

「埴輪に期待された機能は、多くの形代のような穢れの肩代わりではなく、死者に仕える従者よ。墓に埋葬された有力者の奴隷の代わりが埴輪の始まりだわ。人間の他にも馬や鶏、猿、無機物なら刀剣や矢、甲冑があったらしいわね。
 そういえば、愛人役の埴輪もいたらしいわ。そういった埴輪は逃げないように、足が作られなかったそうね」

目の前の人形は歪んた十字型の胴体を持っているが、話を聞いた後ではいわゆる達磨にしか見えなくなってきた。
いよいよ吐き気が増す。



「あそこは神域だった。この人形は、あの神域を守る守り人なのよ」




そんなおとぎ話があるか、と言いたい精神と、何の引っ掛かりもなく納得している思考がせめぎあっている。

「つまりアレですか、俺たちは神様の領域だかなんかを侵しちゃって、それで天罰を受けたってことですか」

それならば、―先輩やKのような神に愛されてる人たちが無傷で、そういった加護がない俺や7先輩が血みどろになった理由も説明できる。

「ねえ、ヤバいんじゃないですか?つまりはその人形は神様のものなんでしょ?返してきた方が…」
すでに一度神域を侵している身である。
ましてや、その人形を神域から離し、鷲掴みでぶら下げるなど、こんどこそ神様に殺されるかもしれない。


「違う、この件はもう全て終わっているわ。今日はそれを伝えに来たのよ」


先輩の響く声が俺の混乱を押しとどめた。

それから7先輩の長い話が始まった。
それはあの山にたどり着いた場面から始まる、7先輩から見たこの事件の一部始終だった。



****


7先輩は件の山に入った時点ではあまり危機感はなかったらしい。
俺たちがいた辺りの土地は私有地ではあるがハイキング用に拓かれた山以外は産業らしい産業に使われているわけでもなく、かといって個人の私有地として活用されているとは言えない放置された山がほとんどだった。
それもあって、7先輩は古く見えるとはいえ、人が登れるように整備された石段がある時点で、目的の山だろうという考えていた。
ハイキングコースではなくとも、山小屋管理のため裏道か何か、と。

地図やスマホの案内を見る限り、山を間違えているとは言い難かった。
さらにはKと―先輩も大して危機感を感じているわけでなさそうだったので、間違っていたら間違っていたで構わない、という心境だったらしい。

そうして4人で山頂と思しきあたりまで登りつくまで、大した変調が感じられなかった。
しかし、頭の上を覆っていた木々がなくなり「ああ広い場所に出た」などという話題が出始めた時だ。

空が見えた時点で、7先輩は再度地図を取出して現在位置の確認をしようとした。
方角は、と太陽を探して首を回し、異様な自体に気付いた。


太陽が、ない


木々に隠れて見えないだけかと自分の影を探して太陽の位置に目算をつけるが、その影も足元に小さく縮こまっている。
太陽が真上になければ有り得ない。

―さん、と声を出そうとして、吐息と共に血反吐を吐き、事態の深刻さを思い知った。
一度異常を自覚すると、もはや立っていることも、ままならなくなり、ずしゃりと階段をずり落ちるような形で倒れこんだ。

さすがに他のメンバーが気付くかと期待したがそれも無く、三人ともごく普通に会話をしながら広場へと登って行った。
その際に俺が平然と目や鼻、口から血がしとどに溢れさせながら話していることに気づき、一刻の猶予もないと考えた。

何か現状打破の手立てはないかと、思考を巡らせてみたところで、体の自由がきかない。
唯一、自由の利く視線を動かせる範囲で周りを見渡した。
すると出血で覚束ない視界の端に、嫌なものを捉えた気がした。

7先輩は、ほぼ直感に近い形で階段の傍に佇むソレが原因――――というか敵だと断じた。

ここからの行動がが7先輩が7先輩たる所以だった。

「壊す」という気持ちで睨み付けた、と本人は語っていたが、要は殺気を放ったのだと思う。



一度、7先輩と―先輩が本気の大ゲンカをした場面に居合わせたことがある。
単純な腕力の強さと戦闘技術の強さで言えば―先輩が圧勝なのだが、こと気迫や覚悟に関しては明らかに7先輩のほうが上だった。
生物として捨ててはいけない最後の心理を捨ててる、とはKの談である。
そして―先輩は
「あいつは狂乱を助長させる。あいつと対峙すると、こっちは最初の予定になかった、本来せんでええ覚悟までせなあかんようになる。まわりの物が壊れてもいい、怪我をしてもさせてもいい、戦いが長引いてもいい、命令を無視してもいい、最悪どちらが命を落としてもいい、ってな。あいつの覚悟が底なしなせいで、「降参」と言わせるために恐ろしい被害が出る。だからアイツとは本気でやりたくないねん。―――まあ、多分やけど、7も『それ』が目的であのスタンスを改めないんやろうけどな」

いざこざのリスクを極端に高くして、争いを回避する・治めるのは兵法ではよく聞く話だが、個人レベルでそれを実践して長く持つのか?という疑問が湧いた人もいると思う。
そういうのって、よくある悪の組織のやり口だろう。
極限まで暴力と恐喝で物事を進め、その被害に対抗しうる強い存在が現れれば、策略は破綻する。

けれど、「今んとこ、あいつは長期戦に持ち込む気はないし、どちらかというと、その強いのを誘い込むのが目的らしい」とのこと。
何と戦っているのかは怖くて深く突っ込まなかった。




まあ、つまり、7先輩は人形に対しても「お互いがぶっ壊れるまで止まらない」という覚悟の元、その人形を睨み付けたのだという。
生物なのか、意志があるのかも定かでない物に対して。

しかし、人形は人間の思考の元、人間の手で、人間に似せて作られているわけだから、少なからず人間の感情に呼応する部分もあったのか。

睨み付けた瞬間、「怯んだ」と7先輩は感じた。

かと言って7先輩の体が動くようになったわけではなかった。
しかし、広場にいる俺に掛かっていた催眠のようなものは弱まり、俺は晴れて7先輩がいないことに気付いた。

ここからは俺の視点と重なる部分も多いと思うので、要点をかいつまんで書いていく。



階段で倒れている7先輩に気付いた俺が近づいてきた時、7先輩はまずい、と思ったらしい。
人形と俺の距離が近くなり、再度俺の様子がおかしくなることを懸念したのだ。

しかし実際にはこれが功を奏した。
7先輩を挟んで、俺と人形の距離が最も近づいたと思われた時、人形は自ら動いて俺との距離を詰めた。
7先輩も人形が動いている瞬間を見たわけではないが、体から力を奪う吸い口が、反対側へ移動したことを感じたのだそうだ。

人形がわざわざ俺の背後をとる位置に移動したことで、7先輩は俺の陰になった。

その瞬間、今まで輪郭もおぼつかなかった体中に、感覚が染み渡るように戻ってきた。
この人形には「視界」が存在すると考えた7先輩は、人形への目隠しとして俺を選んだ。

お化けよりも人間の方が怖い、を地で行く人である。
さすがというか、見上げた思考回路だと思うし、それを知っていてなお、行動を共にするうちのサークル狂ってんな、とも思う。

人形に俺を覆いかぶせたのち、7先輩は血みどろの体で広場に足を踏み入れた。
意識喪失状態で立ち尽くすKと―先輩を見て、最初の7先輩の感想は「綺麗だな」だった。

真っ白な砂利の中、雲も太陽も無い青空の下という二色の中に立つ2人は、雲上人を思い起こさせ、あまりにも神秘的に見えた。

そして、その感想に至ったのちに7先輩に湧きあがったのが、「連れて行かれる、汚さなくては」だった。

衣に塵一つ付いただけで死んでしまう天女のように、穢れは神聖な神の大敵だ。
無論、穢れなぞ何でもない神もいるだろう。
しかし、ここの持ち主は穢れに弱いと、足元で自分の血が触れるそばから輝きを失っていく砂利の様子を見て確信した。

だから、7先輩はまず手始めに、何事かをひたすら見つめる―さんの目を汚した。
ついでに「なに敵前で自失してんだ」という気持ちも握力に込めておいた。

次はただ恍惚としているKだ。
Kが他のものに心奪われることを許すほど、Kを守るものは寛容ではない。
しかし、今は常日頃からKの背後に感じる凄味が失せている。

お前の執着はその程度か、という怒りと共にKの背後を罵った。
Kを汚すと同時に耳を塞いだのは、Kの耳を守るためだった。

Kには甘いのだ。この人は。


ここからの展開は以前話したとおりである。

正気に返った―先輩とKに引きずられるようにして、俺たちは山を下りた。


****


「そして貴方が入院している間に私と―さんで、『これ』の実家に行ってきたのよ」

7先輩は埴輪のような人型を、また再度ぶらんと俺の前にかざす。

「実家がどこだとか、『これ』は何で、どうしてあそこに、何故私たちが、なんていう理屈は、今必要ない」

7先輩が言葉を切ると、病室が静まり返った。
窓の向こうの音すら聞こえない。
先ほどまで、それなりの風が吹いていたはずなのに。

「ねえ、0君。貴方、夢を見るんですってね」

みしり、と人形を持つ7先輩の手に力がこもる。
手の甲に筋が浮き上がり、指の隙間から木くずのようなものがポロポロとこぼれた。

「夢、ですか」
声が震えた。

「そう、あの神域でずっと砂利を食べているのですって?」
7先輩の目が、口が半円を描く。

「初日は、見た。と、思います。でもそれ以降は何も」
ぞわりと背中に悪寒が走った。
怖い。
無性にこの人が怖い。

「なん、で。そんな目で見るんですか」

バチン、と音を立てて明滅する。
光源が窓だけになる瞬間、人形の顔が歪んだ気がした。

「Kちゃんが心配していたわ」

ミシミシミシミシミシ

7先輩の右手が人形の顔を、左手が胴の部分を鷲掴む。
そのまま、ねじ切るように、引き裂くように力を込めた。


「ねえ、0君。最後に食事をとったのは、いつ?」


メキャ、と軽いはずの人形が、大木の幹がへし折られた時のような音を出した。

「あの神域は人間がわざわざ神を持ってきて、神域として切り開かれたもの。神域を構成する砂利も、人形も、神域の維持が務めだわ。それらは物理的な神域としてのエリアが壊されたとしても、神域としての体を保つ本能のようなものを持つ」

ゴキリと、人形の頭が胴体から外れた。

瞬間、腹の中が異様に熱くなる。
なんだこれは、と思う間もなく、7先輩が目の前まで迫っていた。
もはや人形の体を成していない残骸は床に転がっていた。

逆光になって7先輩の表情は見えない。
目だけが爛々と輝いているようにも、影よりも濃い闇のようにも見える。

その目がすう、と細められた。

「目障りだわ。失せなさいな」

みぞおちに硬いものが叩き込まれ、衝撃に息が止まる。
腹の中が引っかき回され、それぞれの臓器が元の位置に戻ろうと更に苦しそうに暴れ回る。

その動きに弾き出されるように、熱いものが喉を目指して進みあがり、口内まで出てきた。
聞くも耐え難い不快な音とともに流れ出たソレは砂利だった。
真っ白な。輝くような白だった。


そこで意識は途切れている。

目覚めると俺は別の病室に移っていた。
看護師の人たちがナースコールを押された俺の部屋に来てみると、木くずまみれの床に、胃液を吐いて気を失った俺が居たらしい。
ただでさえ原因不明の粘膜出血で担ぎ込まれ、食事もとらずに痩せ細っていた患者が、そんな事態になってしまい、看護師の人たちからは退院するその日まで、それはそれは不気味がられた。

ちなみに看護師の人が俺の病室に駆けつけたとき、7先輩は居なかった。
面倒くさかったのだろう。





以上、温泉饅頭を食べながらの0がお送りしました。

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 2016_07_24


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