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午後五時五十分の屋上にて

Category: 小ネタ  

  第三話三 かんけーつ


といったな。あれは嘘だ。
 

 天文台への道すがら、楡崎は赤鴉に言った。

「ねえ赤鴉ちゃん。アタシ、あなたが言っていた『変に無邪気』の正体がわかったと思うわ」

 前を歩いていた赤鴉が止まった。
 長い髪を揺らして、ゆっくりと顔を楡崎に向けた。
 髪に透けた瞳が真っ直ぐに楡崎をとらえる。

 赤鴉の髪は赤い。
 赤銅色とでも言うのだろうか。紅葉の色、薔薇の色、ルビーの色と、様々に評される。
 しかし本人曰く、「赤鴉」とは太陽の異名の一つなのだから夕焼けの色が一番近いのだと主張している。
 なるほど赤鴉の艶やかな髪は燃えるような夕焼けによく似ている。

 その赤は、初夏の新緑に良く映える。


「『変に無邪気』の正体って、どういうこと?ニレさん」

 今2人は急な坂道の只中にいる。
 そうすると楡崎は赤鴉を見上げるような格好になる。
 夏の木々の濃い緑を背景に、赤鴉の顔に影がかかった。
 表情がよく見えない。

「赤鴉ちゃん、あなたが言う学園の『無邪気』さっていうのは、学園の一種の防衛反応なのよ」
 赤鴉の肩が揺れ、顔だけでなく身体全体を楡崎に向ける。
 表情はやはり見えない。

「防衛反応?他人とかかわりたくない、友人なんていらない、って態度の中学一年生に?学園全体が」
「そうよ。新しく入ってきた、他人と馴染もうとしない、和を乱そうとする異分子に」
 赤鴉が小さく息を呑んだ音が聞こえた。

「赤鴉ちゃん、あなたが入学したのが今から3年前。荒れ始めてから9年後ね」
「ええ、その頃には一番荒れていた世代は全員卒業していたから、そう荒れても無かったけれど」

 赤鴉が入学して見た学園の風景は、生徒も職員も誰も彼もが距離を感じさせずに話しかけてくるものだった。

「そうね。でもその頃学園にいる世代と言えば、最も荒んだ学園を目の前で見てきた人たちだったんでしょ?」
赤鴉の体が一瞬硬直し、すぐに力が抜けた。
「…きっとそうでしょうね」
 赤鴉の声が沈んでいく。
 赤鴉も楡崎と同じ結論に至ったらしい。

「アタシはこの学園に来てまだ日が浅いわ。だから上の学年の人たちなんてほとんど知らないけど、おそらく彼らは暗黒時代を過ごして、こうはなるまいと思ったりもしたんでしょうね」

 荒廃した学園の中で疑心暗鬼な日々を過ごした上級生たちは、荒れた世代が卒業で消え、再度荒れるか安定するかの岐路に立たされた時、どう考えたか。

 この先必要なのは味方である。敵意はできる限り刈り取らねば安堵は無い。

 きっと明確にそう考えて行動した人間は少数だろうが、それを本能的に感じ取り、実際に行動に移せた人間はおそらく数少ない人望を持つ生徒だったろう。
 彼らの味方を増やせ疑心を減らせの行動が余波を生み、人同士の溝を埋めよという雰囲気を漂わせ、不自然なほど距離を感じさせない学園の空気になったのだとしたら。

「つまり、私が感じたあの妙に距離が近い雰囲気は、荒れた時代の反動で人間関係を広げたがらない私に過剰反応してたってこと?」
「って考えたら妥当じゃなくて?」
「…正直思い当たる節が無いわけでもないのよね。私に近づいてきた…違うわね、えぇと、よく話しかけてくるのは今はもういない先輩や、古参の先生が中心だったし、私が合唱部に所属した途端話掛ける人間が減ったし…」
「でしょ。『見張られてる』なんて自意識過剰って奴よ赤鴉ちゃん。いやある意味警戒されてた訳だから、合っているいえば合ってるのかもだけどね!」

 楡崎がやーねーこれだから思春期は!とばかりに大仰に肩を竦めて溜息をついて見せた。
 すると赤鴉は顔色も変えずに正に思春期ですが何かと言いたげに鼻を鳴らしてクルリと体を反転させ、また前に進み始めた。
 かなりつっけんどんな態度だが、楡崎は赤鴉の目元が随分と緩んでいるのを見逃さなかった。
 もしかすると、赤鴉はこの数年間かなり緊張した心地で過ごしてきていたのかもしれない。
 そう思うと赤鴉のクールな態度も不思議と可愛く見えてくる気がした。

 楡崎がそんなことを考えていると、前を行く赤鴉が口を開いた。

「でもなんだか、悔しいわね。私が数年間気付かなかった真相に辿りつけるなんて」
「真相ってほどの物じゃないでしょ。単に私が転校生で視点が別にあったってだけだわ」
「あら、話を聞きながら視点を別に持てるって一種の才能よ」
「何の才能よ…」
「探t「おだまり」
 前を歩く赤鴉の背中が震える。笑っているのだ。
「あのね、アタシは探偵が将来の夢ってわけじゃないんだからね!今アンタに付き合ってんのはレポートのためなんだからね!」
「はいはい」
「あーもーーー。で?今から立ち入り禁止場所しらみつぶしに当たって、何を探すっての?何だかんだで聞いてないんだけど」


 赤鴉は足も止めずに一言答えた。
「『生徒会の倉庫』があるかもしれない場所」



 『生徒会の倉庫』
 歴代の生徒会の資料が保管されているという場所だ。
 曰はく、倉庫には今までの全生徒のプライバシーが眠っているだとか
 曰はく、倉庫には歴代の生徒会が隠匿したお宝(?)があるだとか
 曰はく、倉庫には千五百学園の秘密の通路が隠されているだとか
 数え上げれば暇のない噂を聞くことができる。
 この七不思議『生徒会の倉庫』の特徴は学園が立地したこの山のどこかに倉庫があり、そこには何かしらの秘密が隠されている、というものである。

 そのため図書室にも保管されていないアルバムがある、などという噂もあるのだ。


「どーにも要領を得ない七不思議ね…。ていうか何処から出てきたのよソレ」
「それが全然わからないのよ。なんていうか、とりあえず居所の分からないもの、出所の分からないものは全部『生徒会の倉庫』が関わってるってことで片付けてきたみたいなのよね。だからこの七不思議の最初の出所が全く分からないのよ」
「うわぁ。めんどくさいパターンねぇ。
 それで怪しいところ総当たりするのは分かるんだけど、今はどこに向かってるの?」
「さっき言ったとおりよ。多分、私が今まで聞いた中では一番『生徒会の倉庫』が有りそうなところ。
 この山、っていうか学園の敷地内には生徒立ち入り禁止の水道設備やら変電設備やらが点在しているわ。
 それに紛れて『生徒会の倉庫』が存在するっていうのが私の推理なのだけど
 そう考えた時に一番怪しい場所。
 
 業者が入っていくのを一度も見たことがない立ち入り禁止場所よ」

 数百人の生活を賄う設備は日々のメンテナンスが必要になる。
 そのため千五百学園では作業服を着た業者とよくすれ違う。
 彼らは寮の裏手や学校の奥、山に分け入ったところにある電線などのメンテナンスを行っている。
 そんな彼らが一度として足を踏み入れない場所があるならば、そこには学園設備がある訳でもないということになる。

「けれども赤鴉ちゃん、別にあなたが24時間ずーっと監視してたわけじゃないんでしょ?夜とか、授業中にメンテナンスが入っているのかもしれないわよ?」
「確かに見張っていた訳ではないわ。でも業者のメンテナンスが入っていないと考えた根拠はあるの。
 鍵がね、ダイヤルロック式…つまり数字パスワードが必要なタイプの鍵なの。しかもかなり古いわ。
 他の施設の鍵は、普通にキーを差し込むタイプなのに。
 セキュリティ上の観点から見ても、それって随分と雑じゃない?」
「確かに、メンテナンスに来る人間がいつも一緒とは限らない訳だし、担当者が変わるたびにパスワードを教えるってのもねえ。いやそれは担当者が変わるたびにパスワードも変えれば良いのかしら…。でもそんなの使い勝手が悪すぎるわ」
「でしょう?とにかく、これから向かう立ち入り禁止場所は、他の変電施設やらの立ち入り禁止場所とは少し違うのよ。だから、『生徒会の倉庫』探しは、まずはそこから行ってみようってわけ」
「なるほどねー。これで当たりならレポートも進むのだけどね」
「一発で当たるなんて思っちゃだめよニレさん。現場百遍って言うじゃない」
「ちょいちょい探偵と刑事が混同してるのは何なの?」


 そんな会話をつらつらと続けながら歩いていると、目指す立ち入り禁止場所が見えてきた。
 天文台へと続く坂道の脇から、草の少ない獣道のような空間が空いている。
 そこを進むと件のダイヤルロック式の鍵がかかった金網扉が見えるという。

「しっかしホントに分かりにくいトコにあるのね、その立ち入り禁止場所。丈の高い草でほとんど道って分からないじゃないの」
「夏だからかしらね…。…ねえニレさん」
「なに?」
「今、動かなかった?あの獣道のあたり」
 みると、草むらの一部が明らかに『動いて』いる。
 風などの緩やかな動きでなく、明らかに他の生物の動きに合わせて動いている。

「――――!誰か、居るわね」
 自然と二人共声をひそめた。




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 2015_08_14


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